チビスロウ美瑛
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2019年春、中西さんは地元農家たちと、「畑看板プロジェクト」に取り組んでいた。農家と観光客の間に、ポジティブな関係を築いていくための活動だ。現在、四季折々の丘の風景を求めて美瑛を訪れる人々は、年間約226万人にも上る。「たくさんの人々が町を訪れる」。それは本来、喜ばしいことだろう。けれど、撮影のために無断で農地に入る観光客や、農道への無断駐車などが急増し、畑の作物が踏みつけられたり、靴底からの病害虫伝搬など、農家たちは深刻な問題と直面している。農業と観光の間に深い溝が生まれていく中、悲しい出来事が起こってしまう。美瑛の観光名所だった「哲学の木」の伐採だ。哲学の木は、ある農家の敷地内に生えていたのだが、さまざまな手立てを講じても近づいて写真を撮ろうとする人が後を絶たず、ついには「木を伐る」という判断に至ってしまう。元々、木自体にも寿命が近づいていたけれど、伐るという判断を後押ししたのが、一部の観光客の心ない行為だったことも事実だ。人の営みが生む風景を、誇りに農業と観光の間に、ポジティブな関係を21    看板のQRコードを読み込むと、農家からのメッセージやSNSに繋がる仕組み。現在、メンバーの畑に設置中。設置にかかる費用は、クラウドファンディングを活用。美瑛の風景を愛する人々や中西さんを知る人から多くの支援が集まった。(写真提供/中西さん)|写真を通して広がる風景|

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